タイへの出張や法人設立準備の場合、VISA(ビザ/査証)は必要なのか、もし必要ならどのようなVISAを取得したらいいのか、迷われる方が少なくありません。また、労働許可証が必要なのかどうかも気になるところです。そこで、いくつかの出張パターンを想定して、それぞれの準備について詳しく説明します。
日本本社の社員がタイ現地法人もしくはグループ会社に出張
滞在期間30日以内 商用(※)目的
2024年1月1日から2026年12月31日まで、日本人は「商談・ミーティング・視察」など「労働に該当しない商用目的」であれば30日以内の滞在ならビザなしで入国することができます。この場合、タイ側の現地法人や関連会社からの招聘状(Invitation Letter)や商談予約書(Appointment letter)を入国時に提示することが条件とされています。ただ、実際には短期の場合、商用であっても招聘状を取得することなく入国するケースが多いようです。というのも、入国時に押されるスタンプ(60日滞在可能)では入国目的が「観光」なのか、「商用」なのか区別がつかないからです。ただし、これはルール違反であることは間違いないため、事情が許す限り、招聘状を入手するようにしてください。
滞在期間30日以内 労働(※)目的
VISAは不要ですが、タイで「技術指導や展示会運営など労働に該当する業務」を行う場合はWP34(緊急業務届)をタイ入国後、労働省に提出し許可を得ることが必要です(所要日数1〜3日)。WP34の有効期間は発行日から15日間。1回だけ15日間延長できますので、最大で30日の労働が可能となります。なお、正確にはここでいうところの業務は「緊急性のある業務」に限定されますが、緊急でない業務と緊急な業務とを厳密に線引きすることは難しいため、不安な場合はコンサル会社のアドバイスを受けることも選択肢となります。

滞在期間31~60日 商用目的
労働を伴わない商用訪問に対するビザ免除は「30日以内」が条件です。そのため、31日から60日滞在する場合は、日本で「ビジネス訪問ビザ(ノンイミグラントBビザ」(90日滞在可)を取得されることをお勧めします。
観光目的であっても、商用目的であっても、タイ入国時には60日間の滞在許可をもらえますが、31日目から60日目までの滞在は規則上、観光目的でなければなりません。そのため、31日目から60日目までタイに商用で滞在した場合、厳密には「ルール違反」となります。
なお、ノービザで入国後、30日の延長ができますが、商用で訪問される場合、延長は極力避けてください。タイ政府が現在、ノービザ延長への監視を強めているため、次回の訪タイに悪影響を与える可能性があります。
滞在期間31~90日 労働目的
WP34(緊急業務届)は最大30日までしかカバーできませんので、これを超えて労働する場合は、「労働許可証(WP)」の取得が必要です。しかし、WP取得には時間がかかるため、90日の滞在が必要な場合は、1回のタイ滞在を30日以内に収め、複数回訪タイすることにして、WP34で対応するパターンが一般的です。
「ノンイミグラントBビザ(シングル)」を申請する
現在は大使館の窓口申請は廃止され、すべてオンライン申請となっています。
e-Visa(電子ビザ)申請サイト: Thai e-Visa Official Website
審査期間は最大で14営業日。申請するタイ大使館もしくは領事館により必要書類が微妙に異なることがありますので、事前に確認してください。以下は在京タイ王国大使館で申請する場合の必要書類です。
■現住所記載のマイナンバーカードもしくは運転免許書
■財務証明(銀行口座残高証明書など):30000バーツ以上相当額
■現在の雇用主である日本の会社の推薦状(Recommendation Letter)
※推薦状は、会社のレターヘッド入りの用紙に、英文で申請者名、現在の役職、給料、入国日、滞在期間が記載されており、サイン権者の署名と会社の社判・社印・角印等が押印されていることが必要。また、出張者の支出はすべて会社が責任を持つ旨を記入すると尚良し。
■タイ側の会社からの招聘状(Invitation Letter)、タイ商務省発行のタイ会社登記簿謄本(タイ語/発行から6か月以内)
※招聘状は、会社のレターヘッド入りの用紙に、英語で申請者名、役職、入国日、滞在期間が記載されており、サイン権者の署名と会社の社判・社印・角印等が押印されていることが必要。

現地法人設立・販路拡大準備のための訪タイ
(タイに自社拠点がない場合)
タイでの法人設立、販路拡大のための代理店探しなど今後の事業展開の準備としてタイを訪れるケースで最大の課題となるのが、多くの場合、「タイ側の受入企業」が自社グループ内に存在しないため、商用目的のビザ免除に必要な「タイ側からの招聘状」を誰が発行するかという点です。
滞在期間30日以内
前述のように2024年1月1日から2026年12月31日まで、日本人は30日以内の「商談・ミーティング・視察」など労働に該当しない商用目的であればビザを免除されます。しかし、そのためには、タイ側の現地法人や関連企業からの招聘状(Invitation Letter)が必要ですが、「タイ側の受入企業」が自社グループ内に存在しないため、訪問予定の取引先、提携先、または現地法人設立手続きを依頼する法律事務所・コンサル会社から「招聘状」を発行してもらう必要があります。ただ、招聘状を用意できない場合はノービザで入国し、30日以内にタイを出国することになります。
一方、明らかに労働に該当する業務を行う場合は、前出のWP34(緊急業務届)を労働省に提出する必要があります。ただ、現在、労働省への申請が電子化したことでWP34のために必要となる書類(タイ側受け入れ企業の招聘状、会社登記謄本など)を準備することが難しくなっています。電子化前は紙ベースでしたので、会社の書類を労働省で手渡しするだけでしたが、電子化後はオンラインプラットフォームで会社と申請者をそれぞれ登録することが必要となりました。この記録は該当会社の情報として残り続け、いつでも検索可能な状態になります。そのため、発行する企業側も慎重にならざるを得ず、また、システムに不具合が多いため、WP34の申請はこれまでより難易度が上がっています。
そのため、実際には、WP34のために必要なタイ側の書類を用意できないケースの増える可能性が想定されますが、市場視察程度であれば「観光目的」として入国するケースが一般的です。というのも、入国時に押されるスタンプでは入国目的が「観光」なのか、「商用」なのが区別がつかないからです。ただ、観光を目的とする入国で商用業務を行うことは厳密にはルール違反となることを忘れないでください。
滞在期間31日~90日
商用での滞在が30日を超える場合は、本来「ビジネス訪問ビザ=ノンイミグラントBビザ」(90日滞在可)を取得することが必要ですが、タイ法人がない場合は、タイ側のパートナー企業や契約した法律事務所などに協力してもらい、招聘状や会社登記簿などの書類を用意してもらう必要があります。
ただ、前項でご説明した通り、タイ側の会社の書類入手が難しくなっていますので、もし無理な場合は、1~2回でしたらビザ免除制度を利用してタイに入国、1回の滞在を30日以内にとどめる対応が現実的かもしれません。タイで60日フルでの滞在を繰り返す、もしくは30日延長して計90日滞在することは次回のタイ入国時のリスクとなりますため、お勧めしません。
ただ、実際にはそれまでのタイ入国回数、各回の滞在日数、入国間隔などによりケースバイケースで担当係官が判断することになります。ご自身での判断が難しい場合は、タイのコンサル会社に相談するといいでしょう。

タイに自社の現地法人がない場合の「招聘状」入手ルートのまとめ
- 訪問予定の「取引先・商談相手」に依頼する
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「販路拡大」や「市場視察」が目的の場合、最も正攻法な手段です。 商談や会議のアポイントを取っているタイ現地の企業(顧客候補、代理店候補、仕入先など)に依頼し、招聘状を作成してもらいます。複数の会社を訪問する場合、主となる訪問先1社に依頼するか、それぞれの会社からのアポイント確認書を入手します。
- 現地法人設立を代行する「コンサルティング会社・法律事務所」に依頼する
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「現地法人設立」が目的の場合、この方法が最も確実です。 タイでの会社設立手続きを代行する現地の会計事務所、法律事務所、または日系の進出支援コンサルティング会社と契約し、その会社から「設立準備会議のため」という名目で招聘状を発行してもらいます。ただし、多くの場合、正式な契約を結ぶ必要があります。これがないとコンサル会社側が招聘状の取得と情報収集のみが目的と疑い、招聘状発行に応じないケースもあります。
- 展示会・見本市の「主催者」に依頼する
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特定の展示会への参加や視察が主目的の場合、主催者(オーガナイザー)が海外からの参加者向けに招待状の発行サービスを行っている場合があります。公式サイトから申請するか、事務局へ問い合わせて入手します。
依頼する際は、単なる手紙ではなく、タイ入国管理局や大使館が求める公式な形式で作成してもらう必要があります。相手先には以下の要件を満たすよう伝えてください。
会社のレターヘッド: 会社のロゴ、住所、連絡先が入った公式用紙を使用すること。
記載すべき内容:
o 申請者(あなた)の氏名(パスポート通り)
o 渡航目的(詳細に。例:Business Meeting for market research regarding…)
o 入国日・出国日・滞在期間
o 代表者(サイン権者)の直筆署名
o 会社の社判・社印(重要)
セットで必要となる場合がある書類:
o 招待状を発行した会社の「会社登記簿謄本(DBD発行のCertificate)」(発行から6カ月以内のもの)。
o 登記簿上の代表者(サイン権者)のIDカードまたはパスポートのコピー(署名入り)が求められることもあります。

