タイで蚊が媒介する感染症「デング熱」への対策が新たな局面を迎えています。タイ保健省は2025年、年間の死亡者数をゼロに抑えるという高い目標を掲げ、官民一体となった取り組みを推進。雨季に入って蚊の繁殖が進む中、全国各地で防蚊対策と啓発活動が強化されています。
感染は減少傾向も油断禁物 子どもと高齢者が主な感染層
タイ保健省疾病管理局の統計によると、今年(2025年)に入ってから10月上旬までに報告された感染者は約1万9491人、死亡者21人です。前年と比べると減少傾向にありますが、雨季終盤に向けて感染の再拡大が懸念されています。
特に注意が必要なのは、学齢期の子どもと60歳以上の高齢者です。前者は学校など集団生活で感染リスクが高く、後者は糖尿病や高血圧など基礎疾患を抱えることが多いため重症化・死亡リスクが高いとされています。「高熱が2日以上続く場合は自己判断せず医療機関を受診してほしい」と、保健当局は警告しています。
「死者ゼロ」宣言 国を挙げて3本柱の対策推進
タイのソムサック前保健相は、今年6月の「ASEANデング・デー」に際し、年内にデング熱の死亡者をゼロにするという目標を掲げました。政府は現在、以下の3つの重点策を軸に全国的な対策を進めています。
- 発生源の徹底駆除
全国の自治体やボランティア団体が中心となり、蚊の幼虫(ボウフラ)の発生源となる水たまりや不要な容器を除去する活動を展開。住民が自宅周辺の清掃を徹底する運動も広がっています。 - 新ワクチン「QDENGA」の導入
武田薬品が開発した新型デング熱ワクチン「QDENGA(キューデンガ)」がタイ国内でも使用可能となり、過去の感染歴を問わず接種できる点が評価されています。重症化リスクを減らす効果が期待され、タイ政府も公的接種への導入を検討中です。 - 早期診断と啓発活動
発熱や関節痛などの初期症状を見逃さず、迅速に病院で検査を受けるよう促す啓発活動が各地で実施されています。保健省は「民間クリニックでの自己判断的な処置を避け、専門医の診断を受けることが重要」と強調しています。
都市部から地方まで広がる感染 北部と南部で拡大傾向
バンコク都内でも787件の感染例と1人の死亡が報告されていますが、地方では北部と南部で感染が拡大傾向にあります。特に雨期は蚊の発生が急増するため、地方自治体では殺虫剤の散布や教育キャンペーンを継続的に実施しています。保健省は「小さな容器の水たまりも油断できない」として、各家庭での衛生管理を呼びかけています。
観光客にもリスク 「常在感染症」としての認識を
デング熱はタイを含む東南アジア諸国に広く分布する常在感染症であり、観光客も感染リスクを避けられません。特に雨季(5~10月)に渡航する際は、以下のような対策が推奨されています。
- 肌の露出を抑えた服装を心がける
- 蚊よけスプレーや携帯型忌避剤を使用する
- 宿泊施設で網戸や蚊帳を活用する
外務省や保健当局も「短期滞在者であっても、現地での防蚊対策を怠らないように」と注意喚起しています。
デング熱の感染経路・種類・症状・予防法
世界でもっとも人間の命を奪っている動物は「蚊」といわれています。蚊が媒介する感染症は数多くありますが、タイで特に注意したいのがデング熱です。マラリアは主に国境の森林地帯や山岳地帯で見られ、都市部での感染はほとんどありません。一方、デング熱はバンコクなど都市部で流行することが多いため、旅行者や在住者は特に注意が必要です。
症状は突然の高熱で始まります
デング熱は突然の高熱で始まり、激しい頭痛、目の奥の痛み、筋肉痛、関節痛、倦怠感などを伴います。発熱後に皮膚に発疹が出ることもありますが、症状には個人差があります。のどの痛みが少ない点が特徴とされますが、風邪と似た症状も多いため、自己判断せずに早めに医療機関を受診してください。
治療が遅れると「デング出血熱」や「重症デング」に進行し、出血やショック症状を起こすことがあります。適切な治療を受ければ死亡率は1%未満とされますが、油断は禁物です。
治療法ですが特効薬はありません。
現在、デング熱の特効薬はありません。治療は主に解熱や水分補給などの対症療法です。
注意したいのは、アスピリンやイブプロフェンなどの解熱剤を使わないことです。これらは血液を固まりにくくし、出血症状を悪化させる恐れがあります。代わりにパラセタモール(アセトアミノフェン)を使用しましょう。
また、タイ滞在後に日本で発症するケースもあります。帰国後に高熱が出た場合は、「タイに滞在していた」ことを必ず医師に伝えてください。
蚊に刺されることで感染します。
デング熱は、ウイルスを持つネッタイシマカやヒトスジシマカに刺されることで感染します。潜伏期間は3~14日(多くは5~7日)です。これらの蚊は昼間に活動し、屋内外の花瓶や植木鉢など、水がたまった場所で繁殖します。
予防接種は一般的には行われていないため、最も有効な対策は蚊に刺されないことです。明るい色の服を着る、長袖・長ズボンを着用する、蚊よけスプレーを使用する、水たまりを作らないといった日常的な対策を心がけましょう。タイ保健省では若い女性に対して、蚊を誘うとして、黒いスパッツの着用を控えるよう呼びかけています。
特に雨季は蚊の繁殖が盛んな時期です。ベランダや庭の花瓶・水槽・雨どいなどに水がたまらないようにすることが最大の予防になります。
ところで、タイで売っている蚊取り線香はひどく目にしみるのですが、蚊にはあまり効かないとか。買うなら、蚊取りマットやリキッドタイプをお勧めします。一番効果的なのは肌に直接塗るタイプ。デパートで販売している商品でしたら、特に肌荒れする心配はありません。ただ、過敏症の人は日本から持参してきた方がいいかもしれません。
デングウイルスには4つの型があります。そのため、最大で4回感染します。一度感染するとその型には免疫ができますが、別の型に感染すると重症化するリスクが高まります。過去に感染した経験がある方は、再び高熱が出たときには特に注意してください。

