- 2026年1月1日より、物価上昇や高齢化を背景に、社会保険料の算定賃金上限を3段階で引き上げる制度改正が本格的に始まります。
- 第1段階の2026年から2028年は上限が月1万7500バーツとなり、月々の拠出上限額は現行より多い875バーツになります。
- 賃金上限は2029年に2万、2032年に2万3000バーツとなり、労使共に月最大1150バーツを負担する計画となっています。
- 給付水準も向上し、25年間拠出した場合の老齢年金は2026年から現行の5250バーツより6125バーツに増額される見通しです。
タイ政府は2025年12月2日、民間労働者を対象とした社会保険料の算定賃金上限を引き上げる省令案を承認しました。これにより、2026年1月1日から各種給付水準の底上げが本格的に始まります。
現行の制度では、保険料計算の基礎となる賃金上限が1995年以来、月1万5000バーツに据え置かれてきました。しかし、近年は最低賃金や平均賃金が大幅に上昇しており、日額の最低賃金上限は400バーツに達しています。政府は物価の上昇や高齢化に伴う制度の持続可能性強化を目的に、実勢賃金に見合う水準への見直しを決定しました。
2026年からの3段階で引き上げ 拠出率は5%で維持
今回の改正では、社会保険料の拠出率は賃金の5%で維持されますが、算定対象となる賃金の上限が3段階で引き上げられます 。具体的には、第1段階の2026年から2028年は月1万7500バーツ、第2段階の2029年から2031年は2万バーツ、そして2032年以降の第3段階では2万3000バーツとなります 。保険料の内訳は、被保険者が2.5%、雇用主が2.5%を負担し、国庫負担は0%となる構成です 。
これに伴い、被保険者の月々の拠出上限額も段階的に増加します 。現在は上限750バーツですが、第1段階では875バーツ、第2段階では1000バーツ、第3段階では1150バーツへと上昇します 。雇用主も同額を拠出するため、企業側にとっても人件費の負担増につながる点に注意が必要です 。
社会保障給付上昇で企業負担は段階的に増加
負担が増える一方で、被保険者が将来受け取る給付水準は大きく向上します。老齢年金や傷病手当、失業給付などの算定基礎となる賃金が上がるためです。例えば2026年からは、失業や障害時の所得補填給付の月額上限が現行の7500バーツから8750バーツへ引き上げられます。また、25年間拠出した場合の老齢年金も、月額5250バーツから6125バーツに増額される見通しで、中間層以上の被保険者にとってもメリットを感じやすい制度へと変わります。
社会保険基金の基盤強化が期待される一方、経営状況によっては人件費の段階的な増加が負担となる懸念も残されています。今後は保険料率そのものの見直しや退職年齢の引き上げといった追加の改革議論が本格化する可能性もあるでしょう。タイに進出する日系企業は、こうした制度の変化を注視し、長期的なコスト管理を行う必要があります。


