「豚の血」と聞いて、眉をひそめる方もいるかもしれません。しかしアジアの食卓では、これは当たり前の食材です。そのタイ産「加熱済み豚血製品」が2026年4月1日、衛生基準の厳しさで知られるシンガポールへの輸出を正式に認められました。タイはニパウイルスの発生を受けて輸入が停止された1998年以降、豚血市場に再参入した世界初の国となり、今年の輸出額は1億5000万バーツを超えると見込まれています。
そもそもなぜ28年もの間、禁止が続いていたのでしょうか。1998〜99年にマレーシアで始まったニパウイルスの感染拡大で、シンガポールでも食肉処理場の作業員が犠牲になりました。致死率は最大40%に上り、その後「血製品は細菌が繁殖しやすく、病原体を宿すリスクが高い」として輸入が全面禁止に。禁止期間中も違反する業者は後を絶たず、2022年には豚血製品を無許可販売した女性がシンガポールドル8000ドルの罰金を科せられています。
今回の解禁を勝ち取ったのは、チャチュンサオ県のバンクラ豚食肉処理場です。豚の血を管理された環境で採取し、加熱・殺菌処理を施したうえで微生物検査を実施、さらに完全なコールドチェーン管理と追跡可能な記録体制を整えた「完全準拠の規制ルート」が評価されました。 輸入元はタイの大手食品企業CPフーズで、シンガポールでは豆腐に似た箱入りの形で販売される予定です。
欧米人には「血を食べる」文化そのものが驚きかもしれませんが、シンガポールの庶民にとっては「懐かしいホーカーフードの復活」として喜ばれています。食への執念と衛生技術で市場を開拓するタイの底力、侮れません。

