30年前ほど前、バンコク中国人街の一角にある安宿ジュライホテルで沈没していました。貧乏旅行を気取っていたわけではなく、本当に金がなったため、一食の予算は最大15バーツ(当時、1バーツ約5円)。この時に満腹感を与えてくれる数少ない一品が「バーミー・チャップカン」でした。
チャップカンはタイ語で肉体労働者を意味します。つまり肉体労働者のためのバーミー(麺)。口の悪い連中は「貧乏人バーミー(バーミー・コンチョン)」などと呼んでいましたが、それでも嬉々として食べていたわけですから、別にさげすんでいたわけでも、自身を卑下していたわけでもありません。「愛称」に近い感覚でそう呼んでいました。
バーミー・チャップカンは兎にも角にも量が多い。今から60年以上も前、炎天下で一日働いても大した収入があるわけではない労働者に満腹になってもらおうと考え特盛バーミーの提供を始めたそうです。現在の店主は3代目。時代は変わり、客層は変っても、初代の思いは生き続けています。
人気はバーミーヘン(スープなし麺)。自家製の麺に、適度に煮込んだチャーシューと広東菜をのせるだけ。ただ、炭火で調理するためか、火の通り具合が絶妙。価格は普通が35バーツ、大盛り45バーツですが、まずは普通を注文されることをお勧めします。とんこつで出汁をとったバーミーナム(スープ麺)も悪くありませんが、やはり最初はバーミーヘンをお試しください。
ロケーションは、チャルンクルン通り23・ソイチャルンチャイ1。かなり分りにくいところにありますので、初めて行く場合は著名中国寺院モンコンカマラワート寺院を目指し、そこでタイ人に「バーミー・チャップカンはどこ?」と尋ねるといいでしょう。営業時間は午前8時から午後7時となっていますが、麺もしくは具がなくなれば閉店です。客席は店内と店外あわせて約30席ほどです。
私が足しげく通った30年前には、食べ過ぎて店の周辺でもどしている輩もいました。当時に比べると確かに量は少なくなり、価格も上がりましたが、それでもコストパフォーマンスはタイで最高といって過言でないでしょう。当時苦労して働き財を成した人が高級車で乗りつけ、従業員の食事として大量購入することもあるなど、相当数の人々にとり忘れることのできない店となっているのは確かなようです。では、来週、行ってきます。