タイの「労働者保護法(Labour Protection Act B.E. 2541 / 1998)」は、すべての労働者に対し最低限の雇用条件、賃金、労働時間、安全、福利厚生などを保障する基本法です。
目次
法の適用範囲
| 項目 | 内容 |
|---|
| 適用対象 | タイ国内で雇用契約に基づき働くすべての労働者(タイ人・外国人を問わない) |
| 適用除外 | 家事労働者、公務員、船員、外交官など一部の特殊職種 |
労働契約と試用期間
労働契約の種類
- 期限付き契約(Fixed-term contract):終了日が明記されている
- 無期限契約(Indefinite-term contract):終了日なし(一般的)
試用期間
- 最大120日まで
- 試用期間中でも事前通告は必要であり、通知後2回目の給料日をもって解雇が成立します。これに反する場合、解雇保証金30日分を支払う義務が生じます。
賃金・最低賃金
最低賃金(2025年基準)
| 地域 | 最低日額賃金(バーツ) |
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| バンコク・主要都市 | 372〜400バーツ |
| 地方 | 337〜359バーツ |
外国人労働者でも最低賃金の例外は原則なし
賃金支払いの原則
- 月1回以上、通貨で直接または銀行送金
- 給与明細(Payslip)発行義務あり
- 法定控除(所得税、社会保険)以外の一方的な控除は禁止
労働時間・休日・休暇
労働時間
- 1日8時間/週48時間以内(一般業種)
- 危険作業の場合は1日7時間/週42時間
- 残業は1日3時間まで(法定最大11時間)
休日・休暇
| 種類 | 内容 |
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| 週休日 | 週1日以上の休日(通常は日曜) ※25年11月1日現在「週2日以上の休日」への変更が国会審議中 |
| 年間有給休暇 | 雇用6か月以上で年6日以上付与(雇用主が増加可) |
| 公休日 | 年13日以上(王室関連含む) |
| 病気休暇 | 年30日まで有給可(証明書必要) |
| 出産休暇 | 産前産後合わせて98日間(うち45日有給) 2025年9月の改正労働者保護法により、120日間に延長されました。このうち、60日間は有給で、残りの部分は無給となります。また、配偶者の出産を支援するための15日間の有給休暇も新設されました。 |
| 軍事・宗教・選挙休暇 | 正当な目的の場合、有給・無給いずれかで与える義務あり |
残業・休日出勤手当(OT)
| 勤務形態 | 割増率 |
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| 通常時間外労働(平日) | 通常賃金の1.5倍 |
| 休日労働(通常時間) | 通常賃金の2倍 |
| 休日労働(時間外) | 通常賃金の3倍 |
書面による合意が必要(特に休日勤務)
解雇・退職・退職金
解雇時のルール
| 解雇理由 | 解雇手当の支払要否 |
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| 会社に損失を与えるなど重大な就業規則違反・犯罪など | 不支給(即時解雇可) |
| 経済的理由 | 支給義務あり |
| 契約終了(満了) | 支給される場合が多い |
解雇予告
- 原則30日前の通知または1か月分の賃金支払い
- 即時解雇(重大過失など)の場合は通知・手当不要
法定退職金(Severance Pay)
| 勤続年数 | 最低支給額(1日賃金×日数) |
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| 120日〜1年未満 | 30日分 |
| 1年以上〜3年未満 | 90日分 |
| 3年以上〜6年未満 | 180日分 |
| 6年以上〜10年未満 | 240日分 |
| 10年以上〜20年未満 | 300日分 |
| 20年以上 | 400日分 |
福利厚生・社会保険
| 制度 | 内容 |
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| 社会保険(SSO) | 強制加入(給与の5%を天引き)、病院診療、出産手当、失業保険、年金等 |
| 労災保険 | 会社負担。職場事故・通勤災害などに給付 |
| 社員食堂、制服手当、交通費等 | 法定ではないが、契約書・就業規則で明記されれば拘束力あり |
労働者の保護と救済措置
| 項目 | 内容 |
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| 労働局への申告 | 不当解雇、未払い、ハラスメントなどの相談窓口あり |
| 労働裁判所 | 迅速かつ簡易な審理が行われる(弁護士不要) |
| 解雇無効請求 | 違法解雇が認定されれば、復職または賠償命令が出る可能性あり |
外国人労働者に対する注意点
- 労働者保護法は外国人にも適用される
- ビザ・ワークパーミットがない状態での就労は違法就労(本人・雇用主とも罰則)
- 言語の違いを悪用した契約不履行や給与未払いも労働局で救済可能
よくある誤解と実務的注意点
| 誤解されやすい点 | 実際はこうです |
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| 試用期間中は解雇自由? | 30日前の通知または1カ月分の手当が必要(即時解雇は不可) |
| 年休は雇用主裁量で与える? | 最低6日は法定義務 |
| タイ人と外国人で賃金差をつけていい? | 不合理な差別は労働差別として訴訟対象 |
| 退職金は全員もらえる? | 自己都合による退職ではなく、勤続120日以上が条件(ただし就業規則に退職金規定が明記されている場合は自己都合退職でも支給) |