中国EVメーカーが年末に大幅値下げか EV3.0終了前に市場競争が激化

電気自動車(EV)普及策「EV3.0」の終了が2025年末に迫るなか、中国系自動車メーカー各社は販売促進のために大幅な値下げ競争に踏み切っています。政府の補助金支援が終了すれば車両価格は元に戻る見通しであり、販売現場では「年内が売り時だ」というムードが広がっています。

EV3.0は2022年2月15日に内閣が原則承認し、同年3月21日に物品税局が公表しました。「まず消費者に買ってもらう」ことを目的にした初期フェーズの政策で、実施期間は2022年から2025年です。

目次

EV3.0の主な内容

補助金(対象:乗用車・ピックアップ・二輪)

  • バッテリー容量10kWh以上:7万バーツ
  • バッテリー容量30kWh以上:15万バーツ
  • 二輪:1.8万バーツ

税優遇

  • 輸入関税を最大40%減免
  • 物品税を8%から 2%に軽減

生産義務

  • 補助金を受ける輸入メーカーは、輸入台数に応じてタイ国内生産が義務付けられる
    • 2024年末までに義務履行輸入1台につき国内生産1台
    • 2025年末までの履行輸入1台につき国内生産1.5台

また、タイ政府は2025年10月末に制度を最終調整し、国内生産車を輸出した場合、「1台で1.5台分の生産義務を履行した」とみなす新ルールを承認しました。EV3.0の枠組み期間は2026年1月31日まで延長されています。

こうした背景から、2025年の年末商戦では「価格戦争」が一段と激しくなる見方が広がっています。各メーカーは補助金が切れる前に現在の在庫だけでなく、生産義務履行によって積み増された在庫も一斉に値下げして処分するとみられています。

具体的には、2024年7月にタイでの生産を開始した比亜迪汽車(BYD)のタイ正規販売代理店が、「EV3.0終了前の特別キャンペーン」として、BYD DOLPHINおよびATTO3の販売価格を平均14万〜20万バーツ引き下げると発表しました。キャンペーン期間は10月24日から12月10日までで、在庫がなくなり次第終了します。また、12月末までにさらなる条件改善があった場合、差額分を返金補償する仕組みも導入しています。

一方、2025年5月にラヨン県で生産を開始した長安汽車(Changan)は、タイ国内工場でのBEV生産を拡大中です。年内に新型「Deepal S05」を1万台生産し、約9000台をタイ国内で販売、1000台を輸出する計画です。今後は国産化率を60%から80%に引き上げ、EV3.5制度への移行も視野に入れています。また、同社は政府に対し、生産補償比率を「輸出1台につき2台分換算」へ引き上げるよう要望しています。

中国系メーカーの一部はBYDの値下げに追随するとみられ、EV市場の価格競争は既存のガソリン車市場にも波及しています。消費者の多くが「もう少し待てばさらに安く買える」と期待して購入を先送りする動きが見られ、販売現場の混乱や市場の健全性が損なわれる懸念も浮上しています。

ただし、ここ1年でタイのEV市場が安定化に向かいつつあるのも事実です。家計所得の回復や金利安定、EV充電インフラの整備が進み、EVの選択肢が増えたことで、消費者の関心は確実に高まっています。それでも年末に大幅な値下げ競争が起これば、需要の先食いや価格形成の歪みにつながる可能性があります。

EV3.0は2026年1月末に終了しますが、並行して展開されているEV3.52028年1月末まで継続します。EV3.5はEV3.0の後継策であり、EVをタイ産業の中核に育てることを主眼としています。

EV3.5の主な内容

補助金(価格帯・電池容量に応じて段階的に縮小)

  • 2024年:5万〜10万バーツ
  • 2025年:3.5万〜7.5万バーツ
  • 2026〜2027年:2.5万〜5万バーツ

生産義務の強化

  • 輸入 1台につき国内生産2台(2026年までに生産開始の場合)
  • 輸入 1台につき国内生産3台(2027年までに生産開始の場合)

税制優遇

  • 物品税:乗用BEV 2%、BEVピックアップ 0〜2%、二輪 1%
  • 輸入関税:2024〜2025年のみ最大40%の減免
  • 二輪の補助金:1万バーツ
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