- タイの対EU輸出では、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)対象品が2025年に大きく伸びました。
- 2026年1月からCBAMが本格適用されるのを前に、鉄鋼やアルミを中心に輸出が増えています。
- 今後は中小企業も含め、排出量の計測・報告体制やグリーンな供給網づくりが重要になります。
タイの対EU輸出では、EUが導入する炭素国境調整メカニズム(CBAM)の対象品目が大きく伸びています。
タイ商務省通商政策戦略室(TPSO)によると、2025年1〜10月のCBAM対象品の対EU輸出は前年同期比54.71%増となりました。EUのCBAM市場に占めるタイのシェアも、2024年通年の0.29%から0.42%へと上昇しています。
CBAMの対象は、鉄鋼、アルミニウム、セメント、肥料、水素、電力の6分野です。2026年1月から本格適用されていますが、昨年から対応を進める企業の輸出が増えていました。
鉄鋼・アルミが輸出増をけん引
EUは排出量取引制度(ETS)でコストを負担する域内企業の生産品と、域外からの輸入品との条件をそろえ、排出規制が緩い国への生産移転、いわゆるカーボンリーケージを防ぐ方針です。
TPSOによると、タイの対EU輸出増を支えたのは鉄鋼とアルミニウムでした。なかでもアルミの対EU輸出額は5647万ドルに達し、CBAM関連のタイ貿易全体の15%超を占めています。一方で、セメント、肥料、水素は現時点では輸出量が限られています。
排出量報告の徹底が今後の課題
TPSOは、タイ企業が排出量報告に前倒しで対応したことが、輸出拡大の背景にあると説明します。ただし、CBAMの移行期間はすでに昨年末で終了しており、今後は排出量の正確な計測と報告体制の整備が不可欠だと、輸出企業に注意を呼び掛けています。
EUが将来、CBAMの対象を下流製品へ拡大する可能性もあるため、特に中小企業には炭素会計の制度化と、グリーン・サプライチェーンへの転換が求められます。TPSOは具体策として、次の3点を挙げました。
- 監視・報告・検証(MRV)を強化し、スコープ1〜3の排出量を把握すること
- 再生可能エネルギーや省エネ設備を導入し、製品の炭素強度を下げること
- デジタルツールや企業資源計画(ERP)を活用し、原材料が国際基準を満たしているか確認すること
気候変動法整備と輸出全体の動向
タイ政府は、温室効果ガスを管理する国内制度として、気候変動法の整備を進めています。この法案は2025年12月2日の閣議で原則承認されました。CBAM対応を含め、国内制度の整合性が今後の競争力を左右するとみられます。
TPSOが公表した貿易統計によると、2025年1〜10月のタイの輸出総額は前年比13.0%増の2829億8210万ドルでした。EU向けCBAM対象品の伸びは、こうした輸出拡大の一角を担っています。
・タイ商務省通商政策戦略室(TPSO):https://www.tpso.go.th/
・タイ商務省:https://www.moc.go.th/
・欧州委員会(CBAM関連):https://commission.europa.eu/
・経済産業省(CBAM・通商政策):https://www.meti.go.jp/

