- 2025年12月末時点のタイバーツ相場は1ドル31.02バーツを付け、約4年9カ月ぶりの高値圏になりました。
- 国際的な金価格上昇に伴う金の輸出増で多額の米ドルが流入し、為替市場でドル売り・バーツ買いが行われたことが高騰の主要因です。
- タイ中央銀行は12月に市場介入を実施し、金取引業者への指導や企業への資本財輸入の奨励など、バーツ高抑制策を打ち出しました。
- 通貨高は輸出や観光業に悪影響を及ぼしており、2026年には金価格が1バーツあたり7万バーツに達するとの強気な予測が出ています。
タイの外国為替市場でバーツの対米ドル相場が急騰しています 。2025年12月末時点では1ドル31.02バーツを付け、約4年9カ月ぶりの高値圏となりました。この背景には、米国の追加利下げ観測によるドル安の進行に加え、国際的な金価格の記録的な上昇が深く関わっています。タイは伝統的に金取引が非常に盛んであり、金相場の動きが通貨価値を直接押し上げる特有の経済構造を持っています。
金価格の上昇がタイバーツを押し上げる独自の構造
タイ社会において、金は現金以上に信頼される実物資産として広く普及しています。街中の金行(ゴールドショップ)では、庶民が日常的に金の売買を行っており、市場には極めて高い流動性が存在します。
国際的な金価格が上昇すると、タイ国内では5段階のプロセスを経てバーツ買いが発生します。まず、価格上昇を受けた保有者が利益を確定させるために、手持ちの金を国内の金行へ一斉に売却します。金行に集まった大量の金は、国内需要を超えた分が香港やスイスなどの国際市場へ輸出されます。この輸出の対価として多額の米ドルがタイ国内に流入します。
その後、輸出業者は国内での決済や運転資金を確保するため、受け取った米ドルを外国為替市場でバーツへ両替します。この大規模なドル売り・バーツ買いが、実体経済とは別の次元でバーツの価値を急激に押し上げる要因となっています。
バーツ高による経済への影響と中央銀行の対応策
こうした急激な通貨高は、タイの基幹産業である輸出や観光業に深刻な影を落としています。輸出業者は利益の目減りを懸念しており、タイ中央銀行に対して介入や金利調整を求める声が強まっています。
これを受けて中央銀行は12月、市場介入を実施しました。ビタイ総裁は、バーツの過度な変動が経済回復の妨げになると指摘し、取引業者への監視を強化する方針を示しています。また、中央銀行は為替の影響を抑えるため、企業に対して資本財の輸入を奨励するなどの対策を打ち出しました。さらに、金取引業者に対しては、受け取った外貨をそのまま保有することや、決済のタイミングを分散させるよう指導を行っています。
金市場では、2026年に金価格が1バーツあたり7万バーツに達するとの強気な予測も出ています。今後、投資家がポートフォリオを現金から金や他国通貨へ分散させる動きはさらに活発化するでしょう。タイでビジネスを展開する上では、米国のインフレ動向に加え、金価格の推移がバーツ相場を左右する重要な指標となります。

