タイに移住する前、仕事で高島屋とかかわりがあったためか、この百貨店には特別な思いがあります。数年前にタイ進出を聞いた時、ぜひ成功してほしいと思ったものです。
チャオプラヤ川西岸の大型複合施設「ICONSIAM」(アイコンサイアム)のアンカーテナントとして新しいライフスタイルをタイで提案することをコンセプトにオープンしたサイアム高島屋。正式開店の前日、招待客を対象としたプレオープニングで訪れた時、当然ながら大変な賑わいをみせており、「これが続けばいいな」と願っていました。
その後、なかなか行く機会がなかったのですが、ほぼ半年が過ぎた土曜日の午後、食事と食材買出しを兼ねてタイ人の奥さんと行ってきました。
正直言って、買い物客の少なさに驚きました。驚いたのは、来客数だけではありません。従業員の態度にもかなりの違和感を感じました。私が日本にいた頃、高島屋は接客教育に力を入れており、そのサービスには定評がありました。
ところが、サイアム高島屋のスタッフといえば、4人でまとまり大声で談笑している女性グループ、壁に寄りかかりボーとしている男性、座り込んでスマホを操作している若い女性などなど。サイアム高島屋の日本人幹部は、「日本式のおもてなしを導入する」「スタッフの専門性を高める」と当初強い意気込みを見せていましたが、やはりタイでそれを実現するのはなかなか難しいのでしょうか。
ただ、化粧品コーナーにいた女性スタッフ(1名)は非常に素晴らしい接客態度であり、「また買い物にきたい」と思わせるレベルであったことは付け加えておきます。
日本製だから高くても買う、という客は減っている?
「日本製だから高くても買う人がいるはず」との考えは、タイではすでに過去の遺物となりつつあるようです。
サイアム高島屋の商品の品揃えはたいしたものです。これまでタイでは紹介されていなかったブランドも80 ほど投入しています。そのため、開店当初、高島屋幹部は、「割引はしない」「品揃えと顧客サービスで勝負する」と強気な姿勢を示していました。
ところが今回、売り場は3割から7割までの割引表示で溢れ、カジュアル衣類に至ってはBUY2GET1。内装が高級志向だけに、余計に違和感を感じてしまい、「迷走」を感じないわけにはいきません。
ただ、食品コーナーはプチ方向展開が功を奏しているようです。たまたま訪れた富裕層に期待する特別コーナーには、1500バーツおよび2000バーツミガキイチゴ、4個500バーツの茨城トマトが「鎮座」していましたが、生鮮コーナーはかなりの人気。特に1貫10バーツと20バーツの箱詰め寿司コーナーのほか、150バーツの鮭刺身、180バーツの寿司パックなどが置かれたコーナーはかなり高い人口密度となっていました。ただ、同じスペースに置かれていた400バーツを超える寿司を手にとる人はお目にかかりませんでした。
ちなみに子ども用品売り場で人が唯一集中していたのは無料遊戯コーナー。カジュアル子ども服についた7000バーツを超える値札を見たタイ人の若夫婦は驚いた顔をしていました。
店内ですが、食品フロアを除き、正直言って「思い空気」を感じました。同行したタイ人妻に「客少ないね」というのも、小声で話さないとまずいような雰囲気でした。来客数の3割を占めると当てにした観光客もフードコーナー以外ではお目にかかりません。交通アクセスの悪さも集客に響いているようです。あえて日本人駐在員家族の多いスクムビット地区から来る価値があるかのかどうか。今のままでは、厳しい答えが返ってきそうです。
コンセプト見直し、スタッフ教育、広報戦略再検討など課題は多そうですが、是非、今の苦境を脱してほしいと願わずにはいられません。がんばれサイアム高島屋!