
数年同居していたタイ人女性と入籍したきっかけですが、一番大きかったのは、タイ滞在ビザをビジネスビザから婚姻ビザに変更する必要が出たためでした。2010年のことです。
そこで、入籍方法を調べたところ、「はじめに日本で婚姻届出を行い、その後タイで届出をする」、「はじめにタイで婚姻届出を行い、その後日本で届出をする」ーという2つの方法がありました。タイで仕事をしていることから、「はじめにタイで婚姻届出を行い、その後日本で届出をする」を選ぶことにしましたが、日本で最初に届出をする場合はタイ人側の書類が増えることから、妻の負担を減らしたいとの思いもありました。そして、結果として、これが「大正解」でした。
タイで婚姻届を出す上での必要書類は在タイ日本大使館のホームページに詳しく説明してあります。
https://www.th.emb-japan.go.jp/itpr_ja/consular_bmarri.html
ここでは、日本人側の必要書類について留意すべき点を挙げておきます。
独身証明書のタイ語訳は必ず複数枚コピー
在タイ日本国大使館で申請する「独身証明書(婚姻要件具備証明書)」ですが、これは日本語のみですので、タイ語に翻訳した後、タイ外務省領事局国籍認証課(イミグレーションも入居している政府庁舎の隣です)で認証を受ける必要があります。この時、認証印の入ったタイ語の独身証明書は必ず数枚コピーをしておいてください。婚姻ビザを申請する時、これがないとかなり苦労をすることになります。私の知人はこのコピーを残しておかなかったため、婚姻ビザ申請時に代用書類を用意するため、かなりの時間を使うことになりました。
なお、タイ語翻訳および認証ですが、タイ語の学習歴が長い方でも、書式を間違えるとやり直しを命じられる上、認証手続きはかなりの手間もかかるため、現地の翻訳会社に依頼することをお勧めします。
タイで入籍後3カ月以内に日本での入籍も必要
タイの役所で婚姻の届出をした場合、3カ月以内に日本の役所もしくは在タイ日本大使館に報告し、日本での入籍手続きを行う必要があります。実は私はこの規則を知りませんでした。日本で暮らすつもりはなかったため、タイだけで入籍すればいいと考えており、ネットで検索したところ、「タイだけの入籍でも問題なし」との情報が複数あったため、これを鵜呑みにしてしまいました。
これが日本の戸籍法に違反していることを知ったのは、3年後でした。戸籍法の規定によれば、日本人が海外で入籍した場合は、3カ月以内に婚姻証書を日本語訳とともに、その国に駐在する日本の大使・公使または領事に届出するか、もしくは日本の本籍地の市区町村役場に届け出る必要があります。日本での届出は郵送でもいいそうです。
もっとも、これを怠ったとしても、刑事罰には該当しないため罰金が科されることはありませんが、行政罰が適用され5万円以下の過料支払いを命じられることもあるそうです。ただ、実際には届出期限を過ぎたとしても、提出書類に遅延理由書を追加することで受理されるようです。ちなみに私は遅延理由として、❶戸籍法の規定を知らずネット情報を鵜呑みにした❷日本で暮らす予定がなかったため日本での入籍は不要と思った、の2点を挙げました。
タイ人の名字変更は日本での入籍が済んでから
私は日本側への届出を在タイ日本大使館で行いました。日本人担当者が丁寧に教えてくれたため、戸惑うことはありませんでしたが、そこで、注意を受けた点がひとつあります。
私の配偶者はタイで入籍後、すぐに、名字を私の名字に変更したのですが、通常の流れとしては、タイでの婚姻から3カ月以内に日本でも入籍し、さらにその婚姻日から6か月以内に「外国人との婚姻による氏の変更届」を日本の役所に提出するとのことです。タイの役所(本籍地)への名字変更届はその後に行うとのことでした。
なお、日本では婚姻後6カ月以降に名字を変更する場合は、家庭裁判所の許可が必要となります。
日本で最初に入籍した場合は「婚姻登録証」が貰えない

日本で最初に入籍した場合ですが、タイ人の夫婦が皆所持している「婚姻登録証」が発行されません。たかが書類ですが、タイ人女性にとり、この婚姻登録証は特別な意味があるようで、タイのイミグレーションでは婚姻VISAの申請・更新時にこの証書を2人で手にした写真が撮影されます。
日本で最初に入籍し、その後、タイの役所で婚姻届が受理された場合は、婚姻登録証に代わる証明書として「家族状態登録簿」という非常に無機質な書類を作成してくれます。ただ、これは自動的に発行されるものではなく、依頼する必要があります。その後の手続きで使用するため、何部か取得しておいてください。
「婚姻登録証」が発行されないことは、事前にタイ人女性に説明しておかないと、後々、揉めることになります。私は、タイで最初に入籍したため、婚姻登録証を貰うことができましたが、彼女に「これなくてもいいよね」といったら、「絶対にダメ。女性の人生の中で最も大切な書類のひとつ」と話していましたので、ちょっとホッとしました。
このほか、タイで最初に入籍した場合は、婚姻ビザ申請・更新時にも少し手間が省けますが、これは次回の投稿で説明します。