【ビザ】タイの査証免除60カ国が確定、9月15日から30日間滞在に変更

タイ内務省は2026年8月31日、官報にて査証(ビザ)免除措置に関する新しい告示を公布しました。これにより、観光目的でタイに入国する外国人向けの査証免除制度が大きく再編されます。対象となるのは60の国と地域で、滞在可能日数はこれまでの最長60日間から30日間へと短縮されます。日本も対象国に含まれており、施行日は官報公布日(8月31日)から起算して15日間の猶予後と規定されておりますので、2026年9月15日が施行日となります。タイでビジネスを行う日本人にとって、出張や視察の日程管理に直結する重要な制度変更となります。

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今回の官報告示に至るまでの経緯

今回の告示の出発点は、2026年5月19日にタイ内閣が承認した査証制度全体の見直し方針にあります。この方針のもと、2024年7月15日から93の国と地域を対象に導入されていた最長60日間の査証免除制度は廃止されることになりました。

もともとこのノービザでの60日間滞在は、新型コロナウイルス流行で落ち込んだタイの観光業を立て直すための時限的措置として始まったものです。当初は57カ国が対象でしたが、2024年半ばに93カ国へと大幅に拡大されました。しかし運用が長期化するにつれ、査証免除を隠れみのにした不法就労や、商売目的での繰り返し入国といった問題が指摘されるようになり、見直しが進められてきた経緯があります。

2026年7月14日には、新しい対象国リストの具体案がタイ内閣で承認されました。当初の案では30日間査証免除の対象は54カ国でしたが、その後インド、クロアチア、ブルガリア、キプロス、マルタ、モルディブの6カ国が追加され、欧州連合(EU)加盟国27カ国すべてが同じ扱いを受ける形に整理されています。この内閣決定を受け、アヌティン首相兼内相が2026年8月26日付で4件の内務省告示に署名し、8月31日に官報での正式な公布に至りました。

なぜ60日間の優遇措置が見直されたのか

60日間という長い査証免除期間は、旅行者にとっては歓迎すべき措置だった一方で、「副作用」も指摘されてきました。タイを訪れる外国人観光客の平均滞在日数は10日程度とされ、多くの旅行者にとって30日間は十分な期間でした。実際に60日間という枠を積極的に使っていたのは、長期滞在型の旅行者や、リタイア後にタイで暮らす人、リモートワーカー、そして査証免除を利用しながら実質的に短期の商売や就労を繰り返す一部の人たちに限られていたとみられます。こうした背景から、タイ政府は査証免除を観光目的に限定したうえで、滞在日数を30日に戻す判断をしたとみられます。

新たに30日間の査証免除対象となる60カ国・地域

今回の告示で30日間の査証免除対象と定められたのは、次の60の国と地域です。

日本、オーストラリア、オーストリア、バーレーン、ベルギー、ブルガリア、ブータン、ブルネイ、カナダ、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィジー、フィンランド、フランス、ジョージア、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、インドネシア、インド、アイルランド、イスラエル、イタリア、ヨルダン、クウェート、キルギス、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、マレーシア、モルディブ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、オマーン、フィリピン、ポーランド、ポルトガル、カタール、ルーマニア、サウジアラビア、シンガポール、スロバキア、スロベニア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、台湾、トルコ、ウクライナ、アラブ首長国連邦、英国、米国

陸路国境経由のタイ入国での査証免除は年2回まで

今回の告示ではあわせて、陸路の国境検問所を通じて入国する場合、これらの査証免除を利用できる回数が暦年で2回までに制限されます。ただし、マレーシア、ブルネイ、インドネシア、シンガポールの国籍を持つ人、および今後、タイ内務大臣が個別に定める国籍の人については、この2回までという制限の対象外とされています。なお、今回の告示では「タイ内務大臣が個別に定める国籍」については明示されておらず、タイと陸続きの国境を頻繁に往来してきたビジネスパーソンにとっては、実務上の影響が大きい規定といえます。

アライバルビザ詳細は発表待ち、二国間協定は継続

今回の一連の見直しでは、空港などで取得する到着ビザ(VOA、Visa on Arrival)についても対象国が大幅に絞り込まれ、これまで31カ国前後が対象とされていたものが数カ国程度にまで縮小されると報じられています。一部の報道ではアゼルバイジャン、ベラルーシ、セルビアといった国名が挙げられていますが、これは報道機関による伝聞情報にとどまり、確定した公式リストは現時点では確認できていません。正確な対象国は、今後のタイ外務省や在日タイ大使館の公式発表で改めて確認する必要があります。

一方で、中国、香港、カザフスタン、ラオス、マカオ、モンゴル、ロシア、東ティモール、ベトナムとの間で結ばれている30日間の二国間査証免除協定や、アルゼンチン、ブラジル、チリ、ペルー、韓国との90日間の二国間協定、カンボジアやミャンマーとの14日間の協定については、今回の告示による影響を受けず、従来どおり継続されるようです。ただ、日本の場合はこうした二国間協定ではなく、あくまで一般的な観光目的の査証免除制度に基づいて30日間の滞在が認められることになります。

施行日は9月15日、切り替え時期の混乱に注意

新しい告示は、いずれも官報への公布日である2026年8月31日から15日を経過した日、すなわち2026年9月15日に施行されます。したがって、9月14日までにタイへ入国する場合は現行の制度が、9月15日以降に入国する場合は新しい30日間の制度が、それぞれ適用される見通しです。

すでにタイに滞在中の人については、入国時点で許可された期間がそのまま有効とされる方向で運用されるとみられますが、個別の状況によって取り扱いが異なる可能性もあるため、混乱を避けるためにも渡航前に在日タイ大使館や現地の入国管理局の最新情報を確認することをお勧めします。

日本人ビジネスパーソンへの影響は?

今回の変更は、タイに頻繁に出張する日本企業の担当者にとって、日程の組み方を見直す契機になりそうです。これまでの60日間という余裕のある滞在可能期間を前提に、現地法人の視察や複数拠点の巡回、長期の商談スケジュールを組んでいた場合には(これはルール違反ではありますが…)、30日間という新しい上限に合わせた調整が必要になります。タイの入国管理局では、査証免除での入国後に1回に限り30日間の延長申請が可能とされており、手数料はおおむね1900バーツとされていますが、延長の可否は担当官の裁量によるため、必ず認められるとは限りません。今後は30日間を超える商用はノンイミグラントビザの取得が必須となります。

なお、査証免除で入国する場合であっても、タイ入国前にはタイ・デジタル・アライバル・カード(TDAC)のオンライン申請が別途必要とされています。これは査証の有無にかかわらず、すべての外国人旅行者に求められる入国手続きです。あわせて、往路の航空券や滞在先の証明、一定額の所持金の提示を入国審査官から求められる場合がある点も、従来と変わらぬ実務上の注意点です。

商用ビザ免除措置との違いに注意

日本人に限って設けられている商用目的の短期滞在に関するビザ免除措置ですが、この措置は2023年12月にタイ政府が承認したもので、日本の親会社と現地子会社・グループ会社・工場・取引先との会議や視察、技術者や監査担当者による短期の緊急業務などを対象に、30日以内の滞在であれば商用ビザの取得を免除するというものです。適用期間は2024年1月1日から2026年12月31日までの時限措置とされており、今回の官報告示とは異なる制度です。そのため、この商用ビザ免除措置が今後延長されるのかは今のところ不明ですが、撤廃される可能性が高いと思われます。

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