タイでは、地域のために尽くした村長やコミュニティのリーダーに対して長年、「銃」が功労賞として贈られてきました。日本の感覚では驚く話ですが、タイの内務省は最近まで、優秀な村長への褒賞として実際に拳銃や散弾銃を授与していたのです。ある式典では、複数の散弾銃が記念品として配られ、地元メディアでも取り上げられていました。
しかし2026年8月、ノンタブリ県の学校で14歳の生徒による銃撃事件が起き、教職員を含む複数の犠牲者が出たことをきっかけに、この慣習は大きな見直しを迫られました。というのは、この事件で使われた拳銃が、公務員向けの割引購入制度「ウェルフェアガン(Welfare gun)」を通じて入手されたものだったからです。これは公務員や政治家などが市価より安く銃を購入できる仕組みで、以前から購入後に第三者へ不正転売されるケースが多いと指摘されていました。
事件を受けて事態を重く見た内務省は、村長らへの銃の贈呈を直ちに中止すると発表。今後は現金や記念品などに切り替える方針です。あわせてウェルフェアガン制度の新規申請や、銃の購入許可証の発行も一時停止し、既存の許可証についても内容の再点検を進めています。
一方、教育省は全国の学校を対象に、危険物の持ち込みを防ぐための所持品検査体制の整備や避難訓練の徹底、生徒と教職員への心のケア体制の強化などを盛り込んだ「学校安全法案」の策定を急いでおり、近く閣議に提出される見通しです。すでに全国の学校が「安全区域」に指定され、緊急対応計画の作成が義務付けられています。
相次ぐ銃器がらみの事件を受け、タイ政府は学校の防犯強化と銃器の流通規制という両面から、制度の抜本的な見直しに乗り出しています。

