スマートフォンひとつで送金や決済ができる便利な時代。しかしその便利さが、思わぬ形で子どもたちを犯罪に巻き込んでいます。タイ中央銀行(BOT)は、未成年者の銀行口座や電子マネー口座が、オンライン詐欺グループの資金洗浄用に使われる「ミュール口座(他人名義を借りて不正送金の中継地点にする口座のこと)」として悪用されるケースが急増しているとして、未成年口座の1日あたりの送金・決済上限額を制限する新規則を導入すると発表しました。
BOTで広報を担当するチャヤワディ理事によると、警察当局との合同捜査で、犯罪グループが若者を狙って口座を買い取ったり、報酬と引き換えに口座の名義を借り受ける手口が横行していることが判明したといいます。BOTのデータでは、不正利用が疑われる未成年名義の口座は2025年1月の3371件から2026年3月には5741件へと、約70%も増加しており、関連する被害総額は1億8500万バーツ(日本円で約9億円)にのぼります。多くの若者が悪気なく口座を貸してしまい、気づかぬうちにテクノロジー犯罪防止のための緊急勅令違反という重い罪に問われかねない状況です。
これを受けBOTはタイ銀行協会(TBA)と連携し、年齢層に応じた送金上限を設けるガイドラインを策定しました。12歳から15歳は1日5000バーツ(約2万4000円)、15歳から18歳は1日1万バーツ(約4万9000円)までとし、9月から10月ごろの導入を目指しています。日常使いの利便性は多少損なわれるものの、特殊詐欺やオンラインギャンブルの資金の流れを断つ対策として、保護者や金融界からは歓迎の声が上がっています。

