「今のタイは、まさに正念場です」。そう言わんばかりの大胆な数値目標を、タイ政府が打ち出しました。エクニティ副首相兼財務相は、今後12年以内に「中所得国の罠(経済成長が一定の水準で頭打ちになり、なかなか先進国の仲間入りができない状態を指す言葉)」を脱却し、高所得国入りを果たすための新たな国家投資開発戦略を発表しました。柱となるのは、GDP(国内総生産)に対する官民の総投資比率を、現在の23%から30%へ引き上げるという目標です。
具体的には、2029年までに年間のGDP成長率を3%以上に高め、スイスの研究機関IMDが発表する世界競争力ランキングでも、現在の26位から上位20位以内への浮上を目指します。この方針は、タイ投資委員会(BOI)や国家経済社会開発評議会(NESDC)、タイ商業会議所、タイ工業連盟、タイ銀行協会の代表からなる作業部会で承認されたもので、産業構造転換、AIとデジタル技術、グリーン経済、金融サービス、医療投資という5つの分野に特化した専門チームが動き出しています。
あわせて、事業許認可の手続きを大幅に迅速化する「タイ・ファストパス」制度の導入や、税制優遇措置の拡充、官民連携(PPP)事業の積極活用も打ち出されています。世界的に地政学リスクが高まり、各国がサプライチェーンの再編を急ぐ中、タイは東南アジアの投資ハブとしての地位を守れるのでしょうか。新戦略では6か月以内に初期成果、2年以内に主要な進捗を出すロードマップも示されており、長年の課題である行政手続きの簡素化が本当に実現するかが、今後の焦点となりそうです。

