タイ湾とアンダマン海を陸路でつなぎ、マラッカ海峡(マレー半島とスマトラ島の間にある国際的な海上輸送路で、年間約10万隻もの船が通過する要衝)を迂回する新ルートを作る―総事業費1兆バーツ(約5兆円相当)にのぼる国家プロジェクト「ランドブリッジ計画」が、あっさりと撤回される見通しとなりました。
タイ政府は、アヌティン首相の指示のもと、エクニティ副首相兼財務相を委員長とするプロジェクト検証委員会を設置し、90日間で採算性や環境影響を調べ直しました。その結果、当初は利益が見込めるとされていたのに、実際には赤字になる可能性が高いと判明。さらに、計画予定地であるラノーン県では、漁業や、近隣のパヤム島の観光業(島だけで年間10億バーツもの売り上げがあるとされます)への深刻な打撃も懸念されることが分かりました。
委員会はこれらの結果を踏まえ、当初の形での計画推進をやめ、プロジェクトを終了するよう首相と閣僚会議に勧告することを決定しました。まだ土地の買収や工事が始まっていなかったため、政府に損失は生じていないとのことです。今後はランドブリッジの代わりに、ラノーン港の機能強化と鉄道網の整備を優先する方針だといいます。
1兆バーツ規模の国家プロジェクトが、たった90日の調査で方針転換する―この決断のスピード感こそ、タイのインフラ政策のリアルなのかもしれません。

