タイ政府が進める「TH-AIパスポート」構想が、国会(下院)を舞台にした大論争に発展しています。この政策は、15歳以上の国民500万人を対象に生成AIの有料プレミアムプランを1年間無料で提供するもので、総予算は16億2100万バーツ(約83億円)にのぼります。
アヌティン首相は「タイがデジタル競争力を維持するために国民のAIアクセスは不可欠」と強調し、計画の推進を明言しました。しかし、主要野党の人民党(PP)は強く反発しています。
問題の核心は、入札プロセスの不透明さです。野党議員は、正式な公聴会(2025年12月)や入札開始より約2カ月前となる2025年10月27日の時点で、落札企業内定(?)の私企業がすでにキックオフ文書を作成していたと指摘。「競争のはずの入札が事前に決まっていたのではないか」という疑惑が浮上しています。落札したのはタイのIT企業2社による「THコンソーシアム」で、2026年4月に正式契約が締結されました。
野党はすでに国家反汚職委員会(NACC)と国家会計検査院(SAO)への告発手続きを始めており、今後、内閣不信任案へとつなげる構えも見せています。ただ、デジタル経済社会省(DES)側は「すべての手続きは法令に従っており問題ない」と反論し、計画続行の意志を崩していません。
SNS上では「外国のAIサービスを税金で買うより国産AIを育てるべきだ」という声も広がっており、「AIをどう広めるか」から「予算をどう使うべきか」へと議論の焦点が移りつつあります。

