ビザ免除でのタイ観光滞在が60日から30日へと短縮される見通しです。

 タイ政府は2024年7月15日から日本を含む93国・地域の旅行者を対象にタイ入国が観光目的の場合に限り、1回の入国につき60日以内の滞在であれば査証(ビザ)を免除しています。しかし、この措置が取り消され、ビザ免除での滞在期間は最大30日となる見通しです。

ただ、タイ外務省のニコンデート報道官は3月21日、「滞在期間の短縮はまだ正式には決定されていない」と説明。現在、関係当局がプラス面とマイナス面の検討を行っており、ビザ政策委員会による検討を経て閣議に上程されることになるとのことです。今のところ、新たな発表はありませんが、ソラウォン観光スポーツ相によれば、「ビザ免除での滞在期間を最大60日から30日に短縮する方針で大筋合意に至った理由は、ノービザで60日滞在できる措置を悪用して外国人がタイで特殊詐欺や違法ビジネスを行うケースが増えており、こうした犯罪・不正行為を防止するためだ。ただ、正式な発表前にさらに詳細を協議する必要がある」とのことです。そのため、実施までにはもう少し時間がかかりそうです。

 タイ政府は当初、観光目的のノービザ60日滞在を57カ国の国民に適用していました。24年7月15日から、この措置の適用対象を日本を含む93カ国に拡大したわけですが、これは、旅行者のタイ滞在期間を延ばすことで、コロナ禍で大きな打撃を受けたタイ観光業界の業績回復を後押しするためでした。

 しかし、観光目的の旅行者の滞在期間は最長でも3週間程度であり、近隣諸国からの旅行者は1~2週間の滞在が一般的であるため、タイ旅行代理店協会(ATTA)は措置導入当初より、ビザ免除制度を利用してタイ国内で違法に働いたり、事業を営んだりする外国人の増加を懸念していました。そして、案の定、観光業救済策として導入されたビザ免除措置は、名義貸しを利用する観光業者や違法ガイドの増加につながり、ATTAが危惧した通り、観光業の回復を妨げる一因ともなっています。こうした状況を受け、タイ政府はビザ免除措置の見直しが急務と判断し、変更に踏み切ることとなったようです。

短期商用ビザ免除措置にも影響か

「ノービザ60日滞在」は観光業の回復を目的として導入されましたが、タイ政府はこれに先立ち、コロナ収束後のビジネスや投資を促進するため、24年1月1日から26年12月31日まで、日本国籍者が商用目的で30日以内の滞在をする場合、短期商用ビザ(ノンイミグラントビザ)を免除することにしました。

 在京タイ王国大使館によりますと、ビザ免除が認められる短期商用は以下の通りです。

  • タイ側企業との商談や会合
  • タイの子会社・グループ会社・工場・取引先との会議や視察
  • タイ労働省が規定する短期緊急業務(技能者、技術者、監査担当、研修担当、公共・民間事業従事者などによる業務)

23年12月末までは商用目的で訪タイする際、滞在期間に関係なく短期商用ビザの取得が必要で、かなりの手間がかかっていました。しかし、24年1月1日以降、以下のいずれかの書類を用意することで短期商用ビザの取得が免除されています。

  • タイ側の会社(商談先も含む)からの招聘状  (Invitation letter)
  • 訪タイが必要であることを示す証明書  (Certification letter)
  • 会合・商談予約書(Appointment letter)

 上記の書類には、①会社の住所と連絡先②渡航者の氏名③入国目的④入国日⑤出国日⑥滞在期間―が明記されており、⑦社印・社判・角印のいずれかが捺印されていること⑧タイ商務省発行の会社登記簿謄本に名前が記載されている代表者(サイン権保有者)の署名、もしくは代表者(サイン権保有者)から委任を受けている者の署名が入っていること―が求められます。なお、入国を許可するかどうかは、イミグレーション担当官の判断によるとされています。

ところで、25年4月13日現在、在京タイ国大使館のウエブサイトでは、短期商用ビザ免除でのタイ滞在期間を30日以内と明記しています。ただ、実際の運用では、観光・商用どちらの場合も、入国時に押されるスタンプで60日間の滞在が許可されます。

 当初、入国管理局では観光目的の入国者には「ผ60」、短期商用ビザ免除者には「ผ30ม17」という異なるスタンプを使用することを検討していたようです。しかし、現場での混乱を避けるためか、観光・商用を問わず「ผ60ม17」のスタンプが押され60日間の滞在が許可されることになっています。

 また、観光目的の場合、入国後、30日の延長申請が可能であることが明記されていますが、短期就労目的の場合、タイ政府は当初、タイ国内での延長は不可としていました。ただ、パスポートに推されたスタンプを見ただけでは、観光客なのか、短期商用ビザ免除者なのかを区別することはできず、そのため、短期商用ビザ免除者にも30日の延長が認められているようです。

しかし、観光目的でのビザなし入国で許可される滞在期間が30日となった場合、短期商用目的でのタイ入国もその影響を受けることは必至です。入国時のスタンプで許可される滞在期間が60日ではなく、30日となることはほぼ確実であり、30日を超える商用滞在が必要な場合は短期商用ビザを取得することになります。

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