【渡航】タイ入国審査迅速化 自動化ゲート対象国が日本含む33カ国地域に

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スワンナプーム空港で入国審査を大幅スピードアップ 

バンコクの玄関口であるスワンナプーム国際空港で、外国人向けの入国審査を大幅にスピードアップする計画が動き出しました。タイの入国管理局(イミグレーション)は、これまでタイ人とシンガポール、香港の国籍者に限って利用できた自動化ゲート(Auto Gate)を、日本を含む33の国と地域の国籍者にまで対象を広げる方針を明らかにしています。今年の観光繁忙期、いわゆるハイシーズンでの運用開始を目指しているとのことです。タイに頻繁に出張する日系企業の担当者にとっては、入国のたびに長い列に並ぶ負担が軽くなるかもしれない、実務に直結するニュースといえます。

この方針は、8月中旬にタイのスパチー副首相兼商務相らがスワンナプーム空港を視察した際、入国管理局幹部が明らかにしたものです。8月下旬にはウィラサック元観光スポーツ相もあらためてこの方針を説明しており、タイ政府内で継続的に検討が進められていることがうかがえます。

自動化ゲートとはどんな仕組みか

自動化ゲート(Auto Gate)とは、パスポートの情報と指紋や顔写真といった生体認証データ、いわゆるバイオメトリクスを機械で照合し、審査官と対面することなく入国審査を通過できる仕組みです。日本の空港でも日本国籍者や一部の外国人向けに導入されている設備と同様で、書類等に問題がなければ数十秒で通過できる手軽さが特徴です。一方で、機械は表情や態度から不審な様子を読み取ることができないため、対象とする国籍を絞り込む必要があるという課題もあります。

自動化ゲートの対象となるのは33カ国・地域

今回、新たに自動化ゲートの対象となる予定なのは以下の国と地域です。地域別に見ると、アジアでは日本、韓国、マレーシアが追加。オセアニアはオーストラリアとニュージーランド、北米はカナダが選ばれました。そして、欧州では、イギリス、アイルランド、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ポルトガル、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、オーストリア、スイス、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、チェコ、ハンガリー、ポーランド、スロバキア、スロベニア、ラトビア、ギリシャ、マルタという、西欧から北欧、中東欧まで幅広い国々が加わります。中東ではアラブ首長国連邦が対象となります。これに、すでに利用が可能なシンガポール、香港を加えた合計33の国と地域が最終的な対象国として残りました。

対象国選定基準は「パスポートの信用力」

入国管理局が選定の基準として挙げているのは以下の3点です。第1に、国際的なパスポートの信用力を示す指標である「ヘンリー・パスポート・インデックス」の評価です。これはビザなしで渡航できる国の数などをもとに各国のパスポートを順位づけした指標で、世界的な信用度の目安として広く参照されています。第2に、過去の入国拒否件数の少なさです。そして第3に、治安上のリスクの低さです。今回、この3つの条件を満たす国・地域が優先的に選ばれました。

利用できるのは「2回目以降の訪タイ」から

今回の拡大には、見落とされがちですが重要な条件が付いています。対象国の国籍者であっても、タイへの入国が初めて、いわゆるファーストビジターの場合は自動化ゲートを利用できず、従来通り有人カウンターで審査を受ける必要があるという点です。自動化ゲートを利用できるのは、過去にタイへの入国歴があり、すでに生体認証データがシステムに登録されている人に限られます。生体認証データは、初回入国時に有人カウンターで指紋や顔写真を登録する際に取得される仕組みで、2回目以降の入国からその情報を照合に使えるようになるという流れです。

自動化ゲートでの審査にかかる時間は、1人あたり平均24秒から30秒程度とされています。出入国管理局は、システムが本格的に稼働すれば、入国者の半数程度が自動化ゲートを利用できるようになるとの見通しを示しています。ただ、裏を返せば、残り半数は引き続き有人カウンターでの審査が必要になるということでもあり、混雑が完全に解消するわけではないようです。

背景にあるスワンナプーム空港の慢性的な混雑

今回の対策の背景には、スワンナプーム空港における入国審査の慢性的な混雑があります。2025年には同空港の累計利用者数が6290万人、発着便数が37万823便に達しました。2026年についても、利用者数6185万人、発着便数36万8959便という規模が見込まれています。

閑散期であっても、入国者数は1日あたり平均7万人から7万5000人にのぼり、午後2時から5時ごろのピーク時間帯には、1時間あたり5000人から6000人が入国審査場に押し寄せています。観光繁忙期にはこの数字がさらに増え、1日あたり8万5000人から10万人に達します。空港側はピーク時間帯にすべての審査ブースへ人員を配置して対応していますが、それでも行列の解消には限界があるのが実情です。

なお、2025年にタイを訪れた日本人旅行者は109万1227人で、前年比で約4%増加し、国籍別ランキングでは6位となりました。円安やバーツ高、近隣国との競争激化といった逆風のなかでも、日本人によるタイ訪問は底堅く推移しています。短期の出張や視察でタイを繰り返し訪れる日本人ビジネスパーソンにとって、自動化ゲートの活用機会は今後さらに広がっていくと見られます。

スワンナプーム空港全体で混雑対策を強化

出入国審査以外でも、タイ運輸省とタイ空港公社は混雑緩和に向けた対策を進めています。団体旅行者や早めに空港へ到着する旅行者向けに、約2250平方メートルの新しいチェックインエリアを整備する計画があり、座席数約610席に加えて、セルフチェックイン端末18台、チェックインカウンター8カ所を新設する予定です。あわせて、荷物の詰め直しスペースや案内所、保安検査場、店舗、免税還付窓口、給水スポット、充電スポット、喫煙室なども拡充される予定です。空港到着から出発までの一連の動線全体を見直し、旅行者の体験価値を底上げしようという狙いがうかがえます。

スワンナプーム空港では中長期拡張計画が進行中

さらに長期的な計画として、スワンナプーム空港を航空の拠点、いわゆるアビエーションハブとして発展させる構想が進んでいます。東側旅客ターミナルの拡張工事は2027年から2031年にかけて行われ、完成すれば年間旅客対応能力が7000万人まで引き上げられる見込みです。さらに2029年から2035年には南側旅客ターミナルの建設が計画されており、これにより年間対応能力は1億2000万人まで拡大するとされています。第4滑走路の建設も計画されており、2040年の供用開始を目指します。これで1時間あたりの発着便数を120便まで増やせる見通しです。

このほか、空港周辺の商業開発も進められており、約548ライ、面積にして87万6800平方メートルにのぼる土地について、民間企業による開発参加を募る計画が明らかになっています。整備区域には航空機の整備拠点、貨物ターミナル、機内食工場、空港ホテルなどが想定されており、アップスケールおよびミッドスケールクラスのホテル誘致も視野に入れているとのことです。入国審査の効率化は、こうしたスワンナプーム空港全体のグレードアップ戦略の一部として位置づけられています。

日本人ビジネスパーソンへの影響は?

タイに頻繁に出張する日系企業の担当者にとって、自動化ゲートの対象拡大は歓迎すべき動きといえます。これまで日本人はタイ入国時に必ず有人カウンターへ並ぶ必要がありましたが、2回目以降の訪タイであれば、その後は自動化ゲートを利用できるようになります。特に午後の到着便を利用する場合や、繁忙期に出張が重なる場合には、入国審査にかかる待ち時間の短縮が期待できます

ただ、タイへの入国が初めてとなる人については引き続き有人審査が必要となるため、出張スケジュールを組む際には、同行者の渡航歴によって審査にかかる時間が変わりうる点をあらかじめ考慮しておくとよいでしょう。特に、複数人でタイに出張し、一部が初訪タイ、一部が経験者という混成チームの場合には、入国審査の通過にかかる時間に差が生じる可能性がある点も念頭に置いておきたいところです。空港到着後の集合場所や移動時間に余裕を持たせておくとよいでしょう。

一方、自動化デート使用条件を満たしていても、慎重な利用が求めらるのは以下のケースです。

  • タイ長期滞在ビザ所有者でリエントリーパーミット(再入国許可証)を使ってタイに再入国する場合。有人ゲートでも係官のスタンプミス(ノービザ入国と勘違いなど)がよくあるので、自動化で完全に対応できるかどうか今のところ不明です。その場でミスが発覚したとしても、修正にはかなりの手間と時間がかかります。
  • イミグラントビザカテゴリーB(就労目的)で入国しタイで1年ビザに延長する場合。この場合、タイ入国印が必要となるため、自動ゲート通過後、入国スタンプを押してもらえるかどうかを事前に確認することが必要です。確信が持てない場合は有人ゲートを利用してください。
今後、確認が必要な点は?

8月26日の時点で、自動化ゲートの対象拡大開始時期は正式に発表されていません。タイ政府は今年の観光繁忙期(11月~?)までの運用開始をめざす方針を示していますが、具体的な導入日や、スワンナプーム空港以外の国際空港での適用有無については、公式な発表がまだ出ていません。実際に出張や渡航を計画する際には、出発前に入国管理局やタイ空港公社の公式発表を確認することをおすすめします。

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