タイ商務省は2026年4月1日、プラスチック原料である樹脂ペレット、ペットボトル入り飲料水、調味ソースの3品目を新たに「公定価格商品」に追加指定しました。官報に掲載された「物品・サービス価格中央委員会告示第4号(2026年)」に基づく措置で、商務相が委員長として3月27日に署名したものです。有効期間は2026年4月1日から1年間となります。今回の追加前にはすでに54品目の商品と5種類のサービスが規制対象となっており、管理品目の枠組みがさらに拡大した形です。
引き金となったのは中東情勢の悪化
この措置の直接の引き金となったのは、中東情勢の悪化です。タイが中東産エネルギーを輸入する際に通過するホルムズ海峡は、2026年2月28日に始まった紛争の影響を受け、原油や液化天然ガス(LNG)の安定輸送が脅かされています。そして、樹脂の主原料であるナフサが不足すると、ポリエチレンやポリプロピレンなど幅広いプラスチック製品の生産コストが直撃を受けます。
タイ工業連盟(FTI)のクリアンクライ会長によれば、東部ラヨーン県のオレフィン工場がナフサ不足を理由に操業を一時停止した結果、樹脂価格が即座に30〜40%も跳ね上がりました。食品メーカーのヨドクンフードは「プラスチック包装はすでに生産コストの20%を占めており、4月以降は樹脂サプライヤーが現行価格での受注を打ち切る」と明かしています。
企業への影響と政府の対応策
今回の価格統制は1999年制定の物品・サービス価格法に基づき、対象3品目の仕入れ価格・販売価格・取引慣行を厳しく監視することで、不公正な便乗値上げを防ぐことを目的としています。違反した事業者には罰則が科されます。商務省はまた、プラスチック樹脂メーカーと協議を行い、現時点で約4カ月分の在庫があることを確認したうえで、代替調達先の確保も進めています。
タイのプラスチック市場は2026年時点で推定643万トン規模に達しており、自動車・電機・食品包装など多くの産業を支える基幹セクターです。エネルギーコスト高騰が家計や生産現場に広く波及する前に手を打つ「先手の危機管理」として、政府が原材料市場への直接介入に踏み切った今回の措置は、タイでビジネスを展開する日系企業にとっても、コスト計算や価格戦略の見直しを迫る重要な政策変更といえます。

