【ビジネス】タイ進出パターン紹介~現地法人設立、支店開設など(26年8月)

タイでビジネスを始めようと考えるとき、最初に決めなければならないのが「どのような形で現地に拠点を構えるか」という点です。タイ進出の主な方法には、「現地法人設立」「支店開設」「駐在員事務所開設」「既存企業への出資」などがあります。

日本法人または日本人個人が10%以上出資し、2024年7月10日時点でタイ商務省事業開発局(DBD)に登記している法人は9146社にのぼり、そのうち実際に活動が確認された企業は6083社となっています。日本貿易振興機構(JETRO)の2024年度調査によると、この6083社という数字は2位のインドネシアやベトナムのおよそ2000社と比べても3倍近く、ASEAN諸国のなかで突出しています。バンコク日本人商工会議所(JCC)の会員企業数も1656社にのぼり、世界の日本商工会議所のなかで中国・上海に次ぐ第2位の規模です。

現地法人、支店、駐在員事務所、既存企業への出資ですが、それぞれ法律上できることや義務が大きく異なります。事業の目的や予算、将来の事業計画に合わせて最適な形態を選ぶことが、タイ進出を成功させる第一歩になります。

目次

タイ市場を見極める駐在員事務所

「まずは現地の様子をじっくり調べたい」という段階で選ばれることが多いのが駐在員事務所です。これは独立した会社ではなく、日本の本社の一部として扱われる拠点で、設立手続きが比較的シンプルなことが特徴です。申請が受け付けられてから通常3週間程度で設立が認められ、その後に駐在員事務所名義の銀行口座を開設します。

最大の制約は、タイ国内での販売・受注・契約交渉・売買請負など収益活動(営業活動)が法律で一切禁じられている点です。商品を販売したり、契約を結んで売上を上げたりすることはできません。運営資金はすべて日本の本社からの送金でまかなう仕組みになっていますそして、。認められている活動は、以下の5つに厳格に限られています。

  • タイのビジネス状況や経済の動きを本社へ報告すること
  • 本社の商品やサービスを紹介・説明すること
  • 本社がタイ国内で品物やサービスを買い付けるための調査をすること
  • 買い付ける品物の品質チェックや検査をすること
  • 本社がすでにタイへ輸出した商品について現地の顧客へ助言やサポートを行うこと

最低資本金については、2017年の省令施行後にDBDへ登記される駐在員事務所へ適用される最低送金要件が200万バーツと定められています。実際の換算額は送金時のレートで変わるため、進出時には最新レートの確認が欠かせません。

代表者については、外国人駐在員1名に対しタイ人従業員1名を雇用すれば労働許可証(ワークパーミット)の発行要件を満たせる特例的な運用が認められるケースがあります。一般的な現地法人(外国人1名に対しタイ人4人以上の雇用が必要)に比べて少人数で運用できるため、初期の人件費を抑えやすいという利点があります。

タイで本格的に事業をするなら現地法人

タイで商品を売ったり、サービスを提供したりするなど、本格的にタイで事業を始める場合によく選ばれるのが「現地法人」という形態です。現地法人とは、タイの法律に基づいて設立する会社のことで、日本でいう株式会社に近い仕組みです。

現地法人を設立すると、タイ国内で契約を結んだり、事業用の資産を購入したりすることができます。また、会社が得た利益の一部を配当金として日本の親会社に送ることも可能です。

さらに、事業内容がタイ政府の投資促進の対象になれば、タイ投資委員会(BOI、タイへの外国投資を審査・促進する政府機関)の認可を受けられる可能性もあります。BOIの認可を取得すると、対象となる事業について法人所得税の免除や、機械などを輸入する際にかかる関税の免除といった優遇が受けられます。

この法人所得税の免除期間は事業の種類によって異なり、A1+(BOIが定める優遇区分のうち、特に優遇度の高い分野)の一部では10〜13年、A1やA2では8年など、事業ごとに幅があります。つまり、すべての会社が同じ優遇を一律に受けられるわけではないという点には注意が必要です。

一方、タイで会社を作るときに注意したいのが「外国人事業法(FBA、特定業種への外国人の参入を制限するタイの法律)」です。この法律では、外国人が50パーセント以上の資本を持つ会社を「外国企業」として扱い、サービス業や小売業など、法律で定められた業種への参入を制限しています。そのため、BOIに認可された日本企業であっても、100パーセント出資して自由に事業を行えるとは限りません。

そこで検討されるのが、日本企業とタイ企業が共同で会社を作る「合弁会社」という方法です。たとえば、日本側が49パーセント、タイ側が51パーセントを出資する形が考えられます。この場合、FBA上の「外国企業」に該当しない会社として扱われるため、外国人事業法による規制業種への参入制限が大幅に緩和されます。

ただ、だからといって、「タイ資本が51パーセントであれば、どんな事業でも自由に行える」という意味ではありません。事業の種類によっては、別の法律に基づく許可などが別途必要になることがあるためです。

合弁会社には、タイ側のパートナーが持つ販売網や取引先、現地の知識を活用できるというメリットがあります。その一方で、日本側とタイ側で経営方針が食い違うことでトラブルの起きることも少なくありません。そのため、誰が経営判断を行うのか、利益をどのように分けるのか、どちらかのパートナーが会社を離れることになった場合はどう対応するのかといった点を、あらかじめ契約書で明確に取り決めておくことが必要不可欠です。

ここで絶対に避けなければならないのが「ノミニー」です。これは、実際には外国人が出資しているにもかかわらず、タイ人を名義上の株主にすることで、外国人の出資比率を低く見せかける手法を指します。外国人事業法では、このような名義貸しが禁止されており、違反した場合は刑事罰や罰金の対象となるため、「タイ人の名前さえ借りればよい」という安易な考え方は非常に危険です。

なお、「駐在員事務所」でスタートして現地の感触を確かめ、手応えを感じてから「現地法人」へ切り替えるという段階的な進め方をする企業もあります。ただ、実務上は駐在員事務所をそのまま現地法人へ「変更」するというより、別途、現地法人を設立し、駐在員事務所を閉鎖・整理する形になることが多いようです。

日本本社の支店という選択肢

日本の本社の一部としてタイに拠点を置く「支店」は、現地法人と同様に営業活動を行い、売上を立てることができます。ただ、タイで許可された事業の範囲に限られる点は注意が必要です。タイで生じた利益には法人税が課され、国外への利益処分・送金には通常10%の税金が課されます。

また、支店がタイで起こした問題の法的責任はすべて日本の本社が直接負うことになります。設立に必要な「外国企業営業許可」をタイ商務省から取得する際の審査基準は非常に厳しく、許可が下りるまで長い時間がかかることも珍しくありません。

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