韓国政府が、タイ東北部(イサーン地方)の4つの県——ウドンタニ、コンケン、チャイヤプーム、マハーサーラカーム——の出身者について、2026年いっぱい季節労働者としての受け入れを停止しました。農業・水産業の季節労働ビザ(E-8)のプログラムを通じて渡航したタイ人労働者が、指定された雇用主のもとから逃亡するケースが相次いだことが原因です。
日本人にはなじみが薄いかもしれませんが、タイの地方では「韓国への出稼ぎ」が一家の経済を支える重要な手段となっています。コンケンの農村では、韓国での月収が5万〜10万バーツ(約20万〜40万円)に達することもあり、帰国後に家や車、農地を購入する労働者も少なくありません。その魅力的な収入ゆえに、契約終了後も現地に残り、いわゆる「幽霊労働者(ピーノイ)」として不法就労するケースが後を絶ちません。韓国国内のタイ人不法就労者は現在約11万人に上るとタイ政府は推計しています。
この問題に対し、アヌティン首相兼内務相は明快に言い切りました。「法律を自分で破ったのだから、政府は助けられない」——自国民の海外での違法行為に対し、ここまで公に「自己責任」を宣言するのは、国際的な労働市場での信頼回復を優先するタイ政府の姿勢を示しています。首相はさらに「腐った魚が1匹いれば、籠全体が台無しになる」というタイのことわざを引用し、一部の違反者が真面目に働く出稼ぎ労働者全体の評判を傷つけていると訴えました。
MOU協定の規定では、いずれかの県から派遣された労働者の20%以上が逃亡した場合、その県からの採用を停止できるとされています。イサーン地方の人々の「したたかさ」と「切実さ」、そして国家の外交的信頼が交差する、現代タイの縮図がここにあります。

